オリジナル小説

KIEN

最後の夜

月日は流れ、ボードリースから迎えの来る日まで残り一ヶ月となった。あの日以来、砂丘に足を運んではググとの稽古に明け暮れていた。戦闘の腕はみるみる上達していたが、あの日右手に残った感覚だけは未だ抜けていなかった。 そして今、あの事をナムに告げる...
KIEN

右手に残るもの

数日後。 陽を遮るものが皆無な晴天の中、変わらぬ景色の砂丘を淡々と進み続け、かなりの時間が経過していた。「なーー、いつになったら着くんだよ」「バウバウ!」 初めて町を出たクウは尾をブンブンと振り回しながら終始飛び跳ねていた。「疲れても知らな...
KIEN

死の匂い

ググの脳天に渾身の一撃を与えて一年。キエンは見違える程に成長し、背丈はググに追いつこうとしていて、それに連れて稽古はより一層厳しくなっていた。「バウ!バウ!」「来たか」 大きな荷物を抱え現れたググはキエンの目の前で止まり、荷物を地面に放り投...
KIEN

その先の景色

カッ!コンッコンッカッコンッコンッ!! 本格的に稽古が始まってから約一年が経ったが、未だ一撃もググに攻撃を与えられていないキエンは、黙々と稽古に打ち込んでいた。「ほれほれどうした、守るので精一杯のようじゃな」 攻撃を交わし受け流す事に精一杯...
KIEN

高すぎる壁

翌日、キエンは昨日の男、ドゥアールクの事が頭から離れず落ち着かない様子でいた。無言で左右に行き来し、視界に入った小石を思いきり蹴り飛ばした。「くそ、アイツ何者だったんだよ」「バウ!バウ!」 キエンは忙しなく吠え続けるクウを撫で、青空を眺め落...
KIEN

ドゥアールク

雲一つない青空の下、キエンは孤児院の裏でググの到着を待っていた。「遅えな……」 クウは小刻みに脚を動かしながらキエンの周りをウロウロしている。 肉が焼けそうなほど熱くなった地面と、ジリジリと照りつけてくる太陽は普通に呼吸をすることさえ許して...
KIEN

砂色の贈り物

キエンが林に入り少し経過した頃、蝋燭の火が徐々に弱まり白煙へと変わった。「おい嘘だろ?」 絶望と同時にいつも歩いている道でもあり、謎の自信に満ち溢れているキエンであった。「ま、何とかなるだろ」 数歩進んだ時何かに躓いた。「あっぶね!根っこ…...
KIEN

何者

あれから丁度一ヶ月が過ぎた。何もない砂の地面をペラペラな藁のサンダルでキエンは朝から小屋の周りを走っていた。「はぁ…はぁ…はぁ…ふぅ~」「ワオーーーーン!」 一時間は走った気がする、それなのにクウは元気に飛び跳ねている。限界を迎え膝から崩れ...
KIEN

作戦会議

家畜小屋の羊たちが鳴いた。「ベェーーー」 キエンは広場で棒立ちし、目の前の孤児院を見つめていた。気付けば後ろの広場で走り回っていた町の子供達に囲まれ、一斉に話し掛けられる。 キエンは一人一人頭を撫でると、しゃがんで子供達と目線を合わせた。「...
KIEN

忘れ物

砂混じりの風が冷たくなり始め、ググがくしゃみをした。キエンは黙々と作業を続ける。「へっくしょん!……ぬぅ」 そしてついに最後の枝々を束ね屋根に乗せると、今まで作ってきた全てを一つに縛り大声をあげた。「出来たーーーー!!」 それに続いてクウも...